美容師男子×美麗女子


「今日、遅かったじゃん。居残り?」

「・・・・・うん」


あたしはカバンを床に置いた。

ジャケットを脱いで、勉強用の椅子にかける。

ついでにその椅子に腰掛けて、その人を見上げた。


「・・・春樹くん、何でここにいるの?」

「居ちゃ駄目か?」

「いやだって、・・・・」


春樹くん、が立った。

春樹くんは厚かましくも、あたしのベッドの上で寝転んでいた。仮にも、あたしのものなのに。

何にも言わないで、春樹くんは立ち上がる。


大柄な彼が、あたしをじっと見下ろした。今のあたしはまるで、蛇に飲まれそうな蛙だ。


「今日、仕事休み。美咲に会おうと思ったんだけどよ、あいつ今日仕事らしいし」


春樹くんはあたしが座る椅子の真正面に、しゃがみこむ。

そこでやっと、春樹くんが見下ろせたくらいだ。


「なに、千咲お前、びびってんの?」


春樹くんがゆっくりと笑った。

ちらりと見える額の傷。一瞬怖気づいた。


「そんなわけ、ない」


負けじと春樹くんを睨み返した。

春樹くんはそれをかわすように立ち上がる。



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