美容師男子×美麗女子


息を吐いた。

耐えられなくなって、春樹くんの体を強く押す。


「・・・・・もうちょっと」

「・・・・・・・・はる、きくん、」


耳を唇で挟まれる。

くすぐったくて、体を捻ると春樹くんはまた笑った。


「っ・・・・・・・」


春樹くんはあたしから離れた。

切れ長の目が、あたしを見下ろしている。


「千咲さ、俺のことまだ嫌い?」


急いで制服のボタンを閉める。

髪も整えて、体を起こした。


春樹くんはあたしをじっと見てる。

座っててもこんなに身長の差があるんだ、力で敵うはずがない。

春樹くんを見上げて、口を開いた。


「きら、」


い は押さえ込まれて言えなかった。


春樹くんはあたしの頭を抱いて、自分の胸に押し付ける。

ぽんぽん、と雑に頭を撫でて、そのまま立ち上がった。


「お前、髪切った?なんか、短くなってるわ」


どきりとした。

あたしでも母でも分からない、そんな変化を春樹くんは気付いた。


「じゃあ、俺行くわ」


春樹くんはひらひら手を振りながら、あたしの部屋を出た。


ぼさぼさになった頭で、あたしはその後姿をぼうぜんと見てるだけだった。



< 27 / 210 >

この作品をシェア

pagetop