美容師男子×美麗女子
「アヤカです!ご指名ありがとうございまーす!」
女の子は、嘘でできている。
中学校のときの変態保健医は、あたしにそう言った。
悪くないと思う。
だって、その通りだから。
「しっかし大変よねぇ、アヤカも」
「そお?」
はげるくらいにきっちり上にまとめた髪の毛を、ほどく。
隣にいる、“アミ”も同じように髪をほどいていた。
「だって、あんたまだ17歳なんでしょお?それでナンバースリーって、結構苦労してんのねぇ」
「アミとそんなに変わらないじゃない」
更衣室に入って、真っ赤なドレスを脱ぎ捨てた。
赤なんて色、大嫌い。
あたしはやっぱり、あたしを周りから隠してくれるみたいな黒とかが好きかな。
赤色の靴も脱ぎ捨てて、すぐに私服に着替えた。
お店から支給された紙袋に、ドレスと靴を突っ込んで、手に持つ。
「お疲れ、あたし明日学校だから、シフト入れてない。よろしく、じゃあね」
「うん、お疲れー」
アミは念入りに顔のチェックをしていた。
作り物の鼻がとれてないか、確認でもしているのだろうか。
あたしは香水くさいその部屋からすぐに出て、外の空気を吸った。
いくら東京の排気ガス臭くても、やっぱりこんな香水のこもった店よりは、断然空気はいい。
あたしは息を思い切り吸って、かかとの低い靴で、アスファルトの上を歩いた。