美容師男子×美麗女子
「それ、落とすぜ。学校そう言うの厳しいからな」
「え、もう落とすの?もったいない」
「まぁ、先生に目付けられていいって言うならそのままにするけど」
千尋は箱から大きめのビンを取り出した。
薄ピンク色の液体が入っている。
「・・・・・じゃあ、落として」
手を差し出した。千尋は何にも言わずにそれを受け取って、コットンにしみこませた液を爪に乗せる。
少し経って、千尋は爪全体を拭い取るようにして、するりとコットンを取った。
「あーあ、戻しちゃった」
「千咲も何だかんだ言っといて、気に入ってたんだろ」
千尋は薄く笑った。
コットンを近くのゴミ箱に捨てて、ソファにもたれかかる。
「千咲さ、料理とかしないだろ」
「うん、全く。なんで?」
「水仕事とか一切してない、綺麗な手だから」
あたしの手をまじまじと見ながら、千尋は笑った。
要するに、苦労してない手だって言われたんだ。
「・・・・うるさい」
「うん、冗談冗談」
あたしの手を離して、千尋は自分の髪の毛をほどいた。
ピンを制服のポケットにさして、立ち上がる。
「じゃあ、帰る」
「あぁ、気をつけてな」
あたしも立ち上がって、お店の扉を開けた。
冷たい外の空気を吸って、白い息を吐く。
よし、頑張ろう。