美容師男子×美麗女子
夜は、いい。
焼けないし、暑くないし、割と人が少ない。それに、ガキがいない。
ぎゃあぎゃあうるさいガキがいないのが、落ち着く。
夜は自由だから、好き。
あたしが“黒”に溶け込むみたいで、心地いい。
携帯は家に置き忘れたから、時間はどこかのお店の時計で確認する。
ちょうど1時だ。今日は早く帰れた。
よかった、常連客も増えたみたい。
“アヤカ”は若くて、笑顔が多いところが人気の秘密らしい。店長が言ってた。
まぁ、だってあたし17歳だもん。
店長には内緒にしてるけど。アミとか、他の子は知ってるんだけどね。
学校はバイト許してくれるけど、風俗はダメ。
だから、内緒にしてる。お店にも、学校にも。
“アヤカ”は、22歳ってことにしてるんだ。
誰も、私がまだ子供だってことに気付いてない。
トモさんだって、ヒロくんだって、マサヤさんだって、あたしのことを大人として見てる。
まだまだ長続きしそうだ、この仕事。
ビルの谷間からちょっとだけ見える、微妙な形の月を見上げた。
白いっていうか、黄色いっていうか、月って微妙な色。
あたし、よくお客さんに“太陽”とか“バラ”とかにたとえられるけど、月にだけはたとえられたくないな。
あんなのと、あたしを一緒にしないでほしい。
あんなの、孤独なイメージしかないじゃない。
あたしはそう思う。