美容師男子×美麗女子
「やっぱり、そんなに派手にはできないけど、挙式くらい華やかにしたいのよね」
「一生に1度かもしれないし」
母も楽しそうに笑っている。
今のあたしは卑屈で、母は自分と居る時よりも笑ってるんじゃないかと思ってしまう。
「やっぱり、華やかにしたほうがいいんじゃない?一生の思い出になるようなさ」
もちろん笑顔で、あたしはお姉ちゃんに言った。
お姉ちゃんの顔が明るくなる。
「やっぱり、そうよね!春樹とも話し合ってみる」
何でも優しく受け入れてくれる、お姉ちゃん。
いつでも笑っていられて、いつも回りにはお姉ちゃんを慕う人が居て。
「ありがとうね、千咲」
この人と顔は似てるのに、名前は似てるのに、春樹くんはお姉ちゃんを選んだんだ。
あたしと同じ生活で、同じような人生を歩んでいたはずなのに。
何が違うの?
「今日、このあと春樹の仕事が終わってから、春樹と会うの」
「あら、晩御飯は食べたかしら」
「うーん、どうだろう」
あたしは学校カバンを担いで、すぐにリビングから出た。
春樹くんと会うってことは、家に来るってことじゃん。
今日は体調が悪いとか言っといて、寝ようかな。
あぁ、居心地悪い。
なんでこんなに家って居心地が悪いんだろう。
母に晩ご飯は食べてきたと嘘をついて、部屋から出る。
自室に逃げるようにして入った。