美容師男子×美麗女子




仕事が終わると、あたしは夢が覚めたような気分になる。

ふわふわきらきらしてて、輝いていた世界から一瞬で叩き落される。そんな感じ。

私服に着替えて、髪なんてぐしゃぐしゃで、メイクを落とせば誰か分からない状態になる。

つかれきった顔は、本当の年齢より老けてみえると思う。

どっと疲れが溜まる。

一体、なんであたしはこんなに疲れてるんだろう、って。


人が少ない真夜中の都会を歩いてると、突然そんな虚無感に襲われる。


高校生活は1番輝いてたって母は言った。

学校なんて、苦しいだけだ。

みんなやりたいことしたいことが決まっていて、それに向かって走り続けている。
あたしみたいな無計画な人はその“勝ち組”に置いていかれるだけ。

勝ちと負けをはっきりさせる、だから学校ってこわい。

どうせ一緒にいる友達って存在も、影でグループなんか作っちゃって、こそこそ裏で糸引いてるんだ。

こんなに疲れて、苦しくて、悲しい感情を、誰にぶつければいいのか分からない。


誰も使わない公園の、ぼろくさいベンチに座り込んだ。

公園なんて、今時の子供は使わないって。今の子供は携帯とか持ってるんだから。
使うのは金がないカップル。いいラブホ代わりになってるくらい。


膝を抱えた。冬の寒さが身にしみる。

このまま、家に帰らないで学校にも行かなかったら、どんなに楽だろう。

いっそ、学校なんてやめて、仕事に専念しようかな。

そうして、お金ためて、誰も居ない遠い所まで逃げる。

そんな世界になってほしい、だけど、


だけど、



「嘘つくのが女の子なんだろ?」


顔を上げた。

聞き慣れた声だった。



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