美容師男子×美麗女子
「じゃあ、俺に嘘ついてみろよ」
ポケットに手を突っ込んで、ふてぶてしい顔であたしを見下ろしている。
「千、尋・・・・・・・」
出てきた言葉はそれだけだった。
何でこんな時間に居るの、とか、なんでここにいるの、とかは驚きすぎて聞けなかった。
「千咲」
はっきりとした口調で、千尋はそう言った。
いつもの制服姿じゃない。私服だった。
髪は相変わらず適当に結んだ感じだけど、千尋らしい私服だった。ちょっと感動。
「お前、化粧濃い」
生温い温度の手の平をポケットから出して、あたしの頬に触れる。
「嘘、ついてみろよ」
千尋はあたしの顔を覗き込んで、薄く笑った。
あたしはその笑みに負けないように、目を逸らして立ち上がる。
見下ろされたままは変わらないけど、少しは差が縮まった。
「あたしに聞く前に、なんで千尋がこんな時間にいるの?」
「俺?そりゃもちろん、千咲を探す為に」
「絶対嘘でしょ。だって千尋も、あたしのこと見つけてびっくりしてる顔だもん」
「ばれたか」
公園の蛍光灯がちかちかと揺れる。
冷たい風が、あたしと千尋の間を横切った。