美容師男子×美麗女子


「千咲だって、そうだろ」

「・・・・・は」


千尋の視線が、猫からあたしにすりかわる。

見透かしてるような、そんな生意気な目。


「都合がいいときに甘えて、そうじゃないときは冷たく突き放す。俺にはそう見えるけど。まぁ、そんなに甘え上手じゃないようもに見えるけどな」


千尋は満面の笑みで、またブチ猫を触っている。


「で、なんで千咲がここに居るの?」


ブチ猫の喉の音が、妙に落ち着く。

夜の冬風が心地いいくらい、火照ってる。


「嘘、つく?」


千尋の体にもたれかかる。

千尋の癖毛が鼻先にかかってくすぐったい。


「つくよ?」


ふっと千尋の耳元に息を吐いてみせる。

猫みたいに、ぷるぷると頭を振る千尋。


「・・・・・こしょい」

「眠い、もう帰る」


立ち上がって、短くなったスカートの丈を伸ばす。

見下ろすと、千尋と猫が寂しげにこちらを見上げている。


「・・・・・・なに」

「もう、行くのか」

「あんた、猫暖めたいだけでしょ」


そう言うと、千尋はにやりと笑った。



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