美容師男子×美麗女子
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「ねぇ、ちょっと」
あたしは真正面に座っている、ふてぶてしいそいつを睨んでみせた。
そいつは気にした様子もなく、あたしから取り上げた教科書をつまらなさそうに読んでいる。
「千咲さー、テストまだあと6日あるじゃん、勉強なんて直前にやったって無駄だぜ」
「そう言う千尋はどうなのよ、成績の方は」
「中の下」
「千尋は勉強しないわけ?」
千尋から教科書を奪って、机に広げる。
千尋は不機嫌そうに眉を寄せ、机に突っ伏した。
「大体さ、わざわざ俺の家まで来て勉強するかー?自分の家でやれよ」
「自分の家は嫌」
紙パックのジュースを飲みながら、あたしは折れてしまったシャーペンの芯を出す。
「千尋もしたらいいじゃん、勉強」
「嫌」
「なんで」
「・・・・・・・気分じゃない」
頭をぐしゃぐしゃしながら、千尋はあたしの顔を窺う。
ちらりと視線だけを向けて見せた。