美容師男子×美麗女子
「なんでさー、千尋は美容師になりたいわけ?」
「かっこいいから」
即答で返事が返ってくるところが千尋らしい。
それと同時に、イラだちが芽生えてくる。
「まー、それもあるけどやっぱり親が影響してるな。ガキの時から美容師の姿は見てるし」
「いいよね、千尋には夢があって」
千尋が顔を上げた。
「千咲は夢とか無いのか?」
「無いよ。現状維持で精一杯」
「つっまんねー」
「知ってる」
ずずず、と紙パックの中のジュースを飲み干した。
ぐしゃぐしゃ頭の千尋はあたしをじっと見てる。
「本当、千咲は嘘だらけだな」
「あたしだけじゃないよ。みんなそう」
「そうかー?まぁ、間違っては無いけど」
カバンの中の携帯を探す。
ポケットから取り出して、開いた。
「お、今時ガラケー」
「あたしは絶対スマホにしない」
お母さんから不在着信が2件入っている。結構最近だ。
「ごめん、ちょっとかけさせて」
「あぁ」
“お母さん”のダイヤルを押して、携帯を耳に当てた。