美容師男子×美麗女子
すぐにお母さんは電話に出た。
「あ、お母さん?不在入ってたけど、どうしたの?」
『やっと出てくれた!千咲あんたなかなか電話に出ないんだもの、困ったわ。
今からね、美咲連れて買い物行くんだけど、千咲もどう?』
「買い物?春樹くんは?」
『あー、今日は仕事で居ないみたいよ』
「そうなんだ。行ってもいい?」
『いいわよー、待ってたんだから。早く帰ってらっしゃいね』
「うん、分かった」
電話を切って、あたしはチラリと千尋を見る。
「帰るのか?」
「うん、買い物行ってくる」
「聞いてた」
千尋は突っ伏しながら、手を振っている。
「まぁ、そう言うことで」
「いっつも急だよなー」
「ごめんごめん」
机に広げていた教科書をしまって、カバンに押し込む。
「じゃあ、気をつけろよ」
「うん、ありがとう。また明日」
カバンを背負って、あたしは千尋に手を振って部屋を出る。
机に突っ伏したままの千尋は、顔だけを上げて手を振っていた。
甘い匂いが鼻腔をくすぐる。