美容師男子×美麗女子


買い物なんて、いつ振りだったんだろう。

中学の時は忙しくて、学校以外はろくに行けなかった。

高校に入ってからは夜の仕事をやるようになって、仕事に慣れてないまま1年が終わってしまった。

今、やっと仕事に慣れてきたってことなのかな。


紙袋、計4つを抱えながら、あたしは駅のホームに立つ。

空いている指でポケットの中を探って、音楽プレイヤーを探し当てる。


今日は充実した1日だった。

今度は、バッグの中の携帯が鳴る。

急いで開いてみると、お姉ちゃんからだった。


「・・・・・・イベントやってる、21時開始だから、遅くなる、ご飯食べててね・・・・・」


電車が来て、とりあえず乗り込む。

混雑している電車の中で、なんとか自分が立っていられる場所を探して、お姉ちゃんに「了解」とだけ返信した。

いくらお父さんが出張だからって、羽を伸ばしすぎなんじゃないか、とあたしは思う。

1番楽しんでいるのはお母さんだろうな。


耳から溢れ出す自由な音楽が、あたしの体を駆け回る。

電車の心地いい揺れのリズムが、あたしを眠りに誘う。

だめだだめだ、駅を寝過ごしてしまったら、帰るのが遅くなってしまう。


眠たい気持ちを振り払って、あたしは自分の駅まで待った。

電車のアナウンスで、あたしは電車から降りる。

冷たい空気が眠気を覚ます。人混みから解放されたこの開放感。


あたしの足は家に向かった。



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