美容師男子×美麗女子
「千咲」
「春樹くん、・・・・・・・・」
春樹くんの指が、脇腹をなぞる。
ベッドが軋むたびに、あたしは心臓を破られる思いだった。
「は、は・・・・・・・・」
春樹くんがあたしを見下ろす。
あたしは、あたしはどうしたいんだろう。
ずっと、春樹くんを見ていたいけど。
ぞく、と背筋に走る悪寒を無視して、あたしは春樹くんを見上げた。
春樹くんの汗が滴る。
冬なのに、熱い。
「は、る・・・・・・・・」
このまま、何も考えないで春樹くんと一緒に居られたらいいのに。
そうしたら、もう、何もいらないのに。
どんなに、幸せなんだろう。
大好きな人と一緒に居て、笑っている世界が。
息を吐いた。
このままじゃ、いけない。
もう1回息を吐いて、頃合を見計らって、あたしは体を起こす。
全身汗だくで、それは春樹くんも同じだった。
怖かったはずの、春樹くんの額の傷にキスをする。
春樹くんの染めたばかりの黒髪を触わった。
ピアスの穴がちゃんと塞がるまでは、まだ時間がかかるみたいだ。
「春樹くん・・・・・・・」
ベッドのシーツを右手で手繰り寄せて、あたしはそれに包まった。
春樹くんを見上げる。