美容師男子×美麗女子
あたしも用意しないと。
ジャムを塗ったパンをくわえながら、学校カバンの中身を整理する。
今日は体育があるから、ジャージ持ってかないと。面倒だから、この際仮病使おうかなぁ。
うん、そうしよう。
パンを食べ終わって、時計を確認する。
よし、間に合う。
あたしはすぐに身の回りのものをカバンに詰め込んで、家を飛びだした。
「おはよう」
どん、と高い壁に阻まれた。
心拍数が馬鹿みたいに上がる。
ゆっくり、ゆっくり顔を上げた。
「今日、遅刻?昨日また仕事だったんだろ。忙しいな、キャバ女子高生は」
背筋がひやりとした。
カバンを前で抱え込んで、足が凍りついたみたいに動かなくなった。
「あ、・・・・・・・・」
「今日、美咲はどうした?あいつも仕事か?」
あたしはそいつを押し返して、すぐに走った。
汗が止まらない。
「・・・・・美咲が居ないなら、丁度いいや」
その言葉を聞いて、あたしは立ち止まった。
立ち止まったんじゃない、動けなくなったんだ。
そいつが家に入っていく物音がして、あたしはまた走り出した。
あたしの“花の女子高生”の、朝。