美容師男子×美麗女子


「大好き、すごく大好き」


春樹くんは目を見開いて、呆然とあたしを見つめている。

そんな春樹くんは初めて見た。


「だって、お前俺のこと嫌いじゃ・・・」


春樹くんの髪を手に取る。優しくて、柔らかい髪。


「・・・女の子は嘘でできてるんだよ」


喉が痛い。

今までこらえてきた何かが、あたしから零れようとする。

それを堪えるのが、痛い。


「俺は、好きだった。お前が中学の時、お前しか要らなかった」


春樹くんはあたしの肩を痛いぐらい掴んで、眉を寄せながらそう言った。


あぁ、これは、聞きたくない話だ。

今あたしが欲しいのは、過去進行形じゃなくて、現在進行形。

だから、聞きたくない。



「何で、何で今なんだよ!お前が居なくなって、お前を探して、美咲と会ったって言うのに」


体は誰よりも大きい癖して、子供みたいにあたしを睨む春樹くんはちょっと可愛い。

だけど、今はそう思いたくない。


「今は、お姉ちゃんなんでしょ?あたしじゃない、」


だって、だって春樹くんが好きなのは。

愛しているのは、美咲のほう。


「・・・・・なんで、今なんだよ・・・・・・・」


春樹くんは低い声でそう言った。

あたしも、そう思ってる。

すれ違っちゃったんだ、あたしは。



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