美容師男子×美麗女子
「千尋・・・・・・・・・」
ぽんぽんと千尋はあたしの頭を軽く撫でる。
あたしが思いつきで飛び出してきたのは、千尋の家。
千尋の家の近くでうろうろしていたら、本人が後ろから現れてきたところだった。
「泊めて」
「・・・・・はあ?」
「今日だけ。泊めて」
千尋の体に顔を埋めたまま、あたしは言った。
もちろん、千尋は呆れている。
だけど、家に帰りたくないんだ。
「・・・・・まぁ、詳しい事は知らんけど、取り合えず中に入ったら?」
千尋があたしを離して、そのまま手を取って歩きだす。
部屋の温かさがあたしを包む。
「・・・・・・千尋のお母さんとお父さんは?」
「いるよ。1階に居るんだと思う。カットの指導か何かで」
薄暗い廊下を歩いて、千尋の部屋に入った。
真っ暗だった。千尋が電気をつける。
あたしは顔を上げられないまま、その場にしゃがみこむ。
外と部屋の中との温度差が激しくて、体が震えた。
「・・・・・・で、なんで泣いてるんだ」
千尋があたしの正面にしゃがみ込んで、あたしの顔を覗こうとする。
あたしは顔を抑えて、千尋に「見るな」とだけ言った。