美容師男子×美麗女子
□そしてあたしは甘受する
□ □ □
「冷たい」
「・・・・・・仕方ないだろ」
あたしは目を瞑りながら、千尋に正直な意見を言った。
クッションを抱き抱えながら、眉をしかめてやる。
千尋はそれに構わないで、あたしの顎をぐいっと掴んだ。
固まっていた首の筋肉がぼきっと鈍い音を立てたのが分かる。
「ちょっと!なにすんのよ、痛い!」
「あぁ、悪い悪い。だって千咲、下向くから」
「普通、美容師はそんなことしないでしょ!だからお店に出してもらえないのよ」
「うるさい!ったく、ズレた!」
「あたしは知らない!」
千尋は立ち上がって、メイク落としのコットンを手に取って、戻ってきた。
今日は土曜日。
やっと長い期末テストが終わって、昨日で冬休みに入った。
冬休み1日目は、千尋の頼みでアイラインの手伝い。
手伝いというか、手伝わされてる、の方が正しいのかも。
「俺、やっぱこう言うの苦手だわ」
千尋はあたしの右瞼を拭きながら、顔をしかめて苦々しく言った。
「千尋に苦手な事なんてあるんだね。人のアイラインなんて、そう簡単に上手く引けるわけ無いじゃん」
「慣れだって親父に言われたからなあ。まぁ、そう言うことで千咲、頑張ってくれ」
「あたしが?」
使い終わったコットンをゴミ箱に投げ捨てて、再び千尋が腕まくりをする。