美容師男子×美麗女子
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もとの肌の色が分からないくらい、ファンデーションを塗る。
ビューラーで睫毛を上げたら、目の際にラインを引いた。
目尻はきつめに上げて、切れ長な目にする。
睫毛に真っ黒なマスカラを塗って、濃すぎるんじゃないかという付け睫毛をつけて、ゆっくり目を開いた。
カラコンもチークもつけない。可愛くなりすぎるから。
口紅は濃い赤色。今日のネイルと、店長から教えてもらったドレスの色とあわせた。
ゆっくり唇に引くと、強烈にきつい顔ができた。
グロスを引いて、潤いを持った唇を作る。
きついメイクにしないと、あたしは大人に見えないから、もっと濃くしないといけない。
1時間かけて、“アヤカ”ができた。
17歳のあたしから離れて、22歳のあたしができた。
これで、毎日色んな人に嘘をついて、あたしはお金をもらっている。
金なんて、稼ごうと思えばいくらでも稼げる。クラスの女子がそう言ってた。
働いた事が無いやつは、そう思っている。きっと、これから一生。
子供のまま、親のお金に甘えて一生生きていく、可哀想な人たち。
あたしは、そうは思わない。
「千咲」
びくっとして、後ろを振り返る。
座っているともっと威圧感のある、高身の春樹くんが立っていた。