美容師男子×美麗女子


「最悪。ほんとう、最悪。春樹くんがこんな人だとは思ってなかった。はっきりした人だと思ってたけど。

告白して振られた人が家族になるなんて、この気持ち分かる?すっごい最悪」


あたしは立って、今度は春樹くんを見下ろして見せた。

びっくりしたみたいに目を開いて、春樹くんはあたしを見ている。


「いつも、あたしにずけずけとひどいこと言ってきてたじゃん。なんで、今更しおらしくなってるの」


鼻で笑うみたいに、あたしは言って見せた。

ほんとうは、もっと大好きだって言いたいけど。

春樹くんはあたしを選んでくれない。そんな人を想い続けるのは惨めだ。


「春樹くんは、あたしじゃなくてお姉ちゃんなんでしょ?あたしに死刑宣告、2回も言わないでよ。あと、あたしにこんなこと言わせないで」


ちょっと笑って見せた。

春樹くんも苦笑する。そして、立ち上がった。

一気にあたしが見下ろされる。


「本当、お前らしい。千咲がそういう性格でよかった。そこは美咲に似てるかもな」

「お姉ちゃんに?似てる?」

「あいつ、意外と毒舌だからな」


春樹くんの大きい手があたしの頭を撫でた。

角ばってて、太いこの指が大嫌いだったけど。

今はどうしようもなく愛しい。

もうこれで、終わりなんだ。


「ごめんって言ったら、あたし、春樹くんを軽蔑するから」

「厳しいな、千咲は」


春樹くんは残酷だけどね。誰よりも。

本当は、そんな笑顔もう2度と見たくない。

早く、忘れたい。


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