美容師男子×美麗女子
「今までのままの関係で居よう。だって、昔と今は違う」
そう言うと、春樹くんは笑った。
額の傷も、ピアスの穴も、眉間の皺も、染めた黒髪も、あたしの頭2個分高い身長も、たまらなく好き。
お姉ちゃんから奪って、あたしだけのものにしたい。
だけど、大好きな人が選んだ恋を、邪魔するわけにはいかない。
「よろしくね、お兄ちゃん」
「ばか、まだだ」
春樹くんは笑ってあたしの頭を撫でる。
この手で、お姉ちゃんはどんなことをされているんだろう。
あたしが、美咲だったらよかったのに。
春樹くんが部屋から出て行って、あたしは意味もなく笑ってしまった。
喉から引き笑いが漏れてくる。
もう、嫌だ。
こんな世界、嫌だ。
鏡の前に座って、髪の毛をとかした。
美容院なんて、高くて通えない。自分で髪の毛は作る。
黒髪を巻いて、とれないようにハードスプレーで固めて、頭の上のほうで束ねる。
もう、嫌だ。
あたしが、あたしだけが潰れそうだ。