仮からはじまる

「御崎さん、おはよー!」
「さっき平野くんと話してたよね?」
「ねえ、何を話してたの?」

朝から固まったクラスの女の子たちに話しかけられて。

あたしは人と接するのは苦手。
集団でつるむのは得意じゃない。
ひとりの方が気楽だし、自由だし。
だから、ひとりでいることが多くて。
でも、それを嫌だと思ったことはないの。

今だって別に話したくもないけど。
聞かれたから仕方なく

「うん、挨拶しただけだよー?」

なるべく明るく話すように心掛ける。
女の子たちと関わると面倒。
女の子たちを怒らせると、さらに面倒。
敵に回したら厄介だわ。
だから、気を付けなきゃ。

これがあたしの学校での過ごし方。

「そうなんだー!」
「平野くんと挨拶できて羨ましいー!」
「平野くん、挨拶したら答えてくれるよねー!」

そう言いながら。
きゃあきゃあと騒ぐ女の子たち。

そうですか…。
でも、棘があるでしょ、その言い方。
あたしから挨拶なんてしてないし。
別に平野篤の優しさなんて、求めてませんから。

はあ…。
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