仮からはじまる

日誌書いてたら遅くなっちゃった…。
金曜日の日直は面倒ね。
一週間のまとめとか、来週の準備とか。
先生にいろいろ頼まれちゃって…。
別に急いで帰らなきゃいけない用事もないけど。
誰もいない教室にひとりで残ってるのはちょっと…。

遠くで部活の音が聞こえたりして。
授業がおわったあとの学校の雰囲気は嫌いじゃないけど。

でも。
昇降口についたら不良の集団が集まってて。

なんでこんなところにいるの?
関わりたくない…。

どうして靴箱の前に座ってるのよ。
靴が出せないでしょ?
邪魔なのよっ!!
とは、とても言えないけど…。

勇気を出して。
声をかけて。
どいてもらうしかないみたいね…。

「あの…」

勇気振り絞ってますっ!!
必死に声を出す。

「お、御崎唯」

あのね。
軽々しく名前を呼ばないでよ。

「どうしたの?」

馴れ馴れしく話しかけられるのも嫌。
急に近付いてきて、なぜか隣に立つの。
距離が近くて。
怖い…。

でも、これってチャンスだわ。
立ち上がった人たちの隙間から靴に手を伸ばせるもの。
さっさと帰るわ!!
そう思ってたら。
伸ばした腕をぐっと掴まれて。

う…。
痛い…。
どうしてそんなに強い力で掴むの?
痛くて思わず顔が歪む。

「ひまなら俺らと遊ばない?」
「行くでしょ?」

行くわけないでしょっ!!
どうしてそうなるのよ。

振り払おうと思っても、掴まれた力が強すぎて。
無理みたい…。

「離してよ」

かなり強気で言ったつもりだったのに。
全く効果なし。
逆に腕を引っ張られちゃって。
近付きたくもないのに、引き寄せられて。

ああ、もう…。
どうしたらいいの?
と思ってたら。
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