仮からはじまる
第七章

そんなわけで。
これから結城真一と一緒に帰ることになりました。

まるで本当に付き合ってるみたい…。

もちろん毎日一緒に帰るわけじゃないけど。
でも、あの集団への牽制にもなるって言ってくれた。

それから…。
すぐに帰ると昇降口も駐輪場も混んでるから、ゆっくりでいいぞって言ってくれたんだけど…。

女の子たちに一緒にいるところを見られたら、また囲まれて面倒なことになるかもしれないって心配してくれてるんだと思う…。

いつも心配されるばっかりで、本当に申し訳ないわ。

本当はものすごく気を遣ってくれて、優しい人、なんだと思う。

それにしても、何でこんなに心配してくれてるのかしら。
そもそも何でそんなにあたしのことが心配なの?
他にもいるじゃないの、心配な人たちが。
絡まれて困ってる人は他にもたくさんいるでしょうに。

や、今の言い方はちょっと悪かったな…。
絡まれて嬉しい人なんて、きっといないと思うから。
それは自分でもよくわかる…。

何でそんなに心配されるのか、一回ちょっと聞いてみた方がいいのかしら。

おまえ危ないから心配、とか言われたっけ…。
具体的に何がどう危ないの?
それが聞きたいわ。

言われたときのあの状況を思い出して…。
恥ずかしかったことまで思い出しちゃうけど、今はそれは考えない!

あ、そうだ…。
あたし絡まれ体質なんだっけ。
だから、危ないってことなのね…。
もう忘れろって言われたけど。
言われたことが衝撃的すぎて忘れられないわ…。

ていうか絡まれ体質って何?
結城真一に言われたことをいろいろ思い出す。

う…。
また恥ずかしいことまで思い出しちゃって慌てる自分が嫌になるわ…。
ひとりで考えてひとりで慌てて、ばかみたいじゃない…。

あ、そういえば…。
スキがあって無防備って言われたっけ。

つまり何よ、そういうこと?

スキがあって無防備なところが絡まれやすくて危ないから心配、ってこと?

今まで言われたことを総合するとそうなるわよね…。

はあ…。
自分で考えて自分でへこむわ…。

絡まれるのはスキがあって無防備な自分のせい。
だから悪いのは自分だって言われてるみたいで。

落ち込んでもやもやする…。
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