仮からはじまる

でも考えててもしょうがないし。
これ以上に落ち込みたくない。
もう考えるのはやめにしなきゃ。

何事もなかった今日に感謝したほうがいいわよね?

結城真一のことばっかり考えててすっかり忘れてたけど。
昨日あの集団の前で、付き合ってる宣言されちゃったのよね…。
俺の女、とか言われちゃって。

今日はそのことでもっと騒ぎになってるかと思ったのに。
周りの人たちは全然知らないみたい。

あの集団の人たち、誰にも何も言ってないのかしら。
今の時点ではまだ言ってないみたいね。
まあ、わざわざ言うことでもないと思うけど。
ていうか誰かに話すなんてあんまり無意味じゃない?
結城真一に睨まれるだけだから。

あ、ちょっと待って。
結城真一のことばっかり考えてたっていうのはおかしくない?

おかしいでしょ!
何であたしが結城真一のことばっかり考えてることになるのよっ!!


また急に意識しちゃって慌てるけど、慌てたところで自分が悲しくなるだけなのよね…。

だからもう考えるのはやめようと思ってるのに。
気がついたら結城真一のことばっかり考えちゃう。

考えたところで最終的には落ち込んだり悲しくなったりするだけなのに。
結論が出るわけじゃないのに。

ってまた結城真一のこと考えちゃってるし。

もう…。
そうだ、何か別のこと考えたらいいのよね?

と、思ったけど。
これから結城真一と会うんだから。
また嫌でも結城真一のこと考えちゃうわ。

あんまり待たせても悪いし…。

あたしはふらふらと結城真一の待つ場所へと歩き始めた。
人通りの少ない廊下の先の、屋上に続く階段が待ち合わせの場所。

屋上に用がある人しか通らないし、そもそも屋上に用がある人なんていないだろうからってことで、結城真一に指定されたの。

きっともういるわよね?

指定された階段に向かってふらふら歩いてたら。
廊下にじっと踞ってる女の子がいる…。

こんなところでどうしたのかしら…。
具合でも悪いの?

気になって近付くと、同じクラスの女の子。
ともちゃん、よね?

みんなに「ともちゃん」って呼ばれてるから、「ともちゃん」なのはわかるけど名字がわかんない…。

結城真一のことで囲まれたときに、ともちゃんもいたから気まずく思わないこともないけど、でもこのままほっとけないし、黙って通り過ぎるのは無理。
< 31 / 48 >

この作品をシェア

pagetop