仮からはじまる

はぁ…。
ついに帰りになっちゃった。
渡すなら、帰り道だって決めてたけど。
なんていうか、いまいち、心の準備が…。

う…。
どうしたらいいのかしら。

廊下のロッカーで帰る準備をしてたら

「おい」

結城真一に呼ばれて。
必要以上にどきっとしちゃうの。

「帰るぞ」
「あ、ちょっと待って。まだ準備が…」

いつも以上に女の子たちに囲まれて。
ああ、もう…。
視線が痛いわ。

「早く学校から出たい…」

思わず言っちゃって。
こんなこと、言うつもりなかったのに…。
言っちゃってから後悔したけど。

「そうだな」

頷くように言ってくれた結城真一の言葉に救われるの。

何も言わないで歩く結城真一のすぐうしろを歩きながら。
ざわざわと話す女の子たちの声が聞こえるけど。
結城真一は全然聞こえないふり。
反応無し。
気にしてないみたい。

堂々としてる姿を見てたら、あたしも堂々としていられるわ。
この人の傍にいたら、他のことなんて気にならなくなるのよね。
それってすごい力だわ。
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