青のキセキ
【翔と久香side】
「なぁ、久香。あいつら、どう思う?」
誰も居なくなった店内で、後片付けをしながら翔が久香に話しかける。
「翔ちゃんは?」
洗い物をしながら聞き返す久香。
「遙菜ちゃん、大和のこと好きなのか?」
「好きになったら駄目だって、自分に言い聞かせてるみたい」
「マジかよ?それって、もう好きってことじゃん」
「海堂さんに触られても、怖くないって言ってた」
「...そっか」
テーブルを布巾で拭きながら、溜息をつく。
「海堂さんは遙菜のこと、どう思ってるの?」
「間違いなく、惚れてるね。大和が自分から他人に興味を示すなんて、遙菜ちゃんが初めてだ」
「綾さんは?」
「綾は...。学生時代に綾から告白したんだ。当時、大和には他に好きな女もいなかったし、ま、いいか...てな感じで付き合いだして。大学卒業して、同じ会社に就職してさ。2人の関係も上手くいってたみたいで、自然な流れで結婚したよ」
「でも、海堂さんは綾さんのこと、愛してるんでしょ?なのに遙菜のこと好きだなんて、浮気性なの?」
泡だらけのお皿を水で流しながら、久香が真剣に翔に問いただす。
「......どうだろうな。アイツ、綾の事、どう思ってるのかねぇ。愛っていうより、同情に近いものがあるんじゃないのかな」
「どういう意味よ、それ?」
「俺の口からは言えないよ。いくら綾の事嫌いでも、大和は親友だからさ。アイツの家庭の話をベラベラと喋ることは出来ない」
「翔ちゃん、かっこいいね」
「当り前だろ?口が堅くないと、商売できないよ」
親指をたてて、ドヤ顔をする翔をみて、久香が笑う。
「それにしても、あの2人。必然的に出会ったって感じだな」
「偶然すぎる偶然だったもんね。運命の相手なのかも」
「にしては、障害がでかすぎる...」
大和と遙菜の行く末を案ずる2人。