青のキセキ
道ならぬ恋
「さて、いい雰囲気の所、話を元に戻して申し訳ないんだけど......」
翔さんが私と課長の様子を窺うように言った。
その言葉でハッとする。
そういえば......。
さっきから、翔さんや久香の見てる前で課長に抱きしめられてる...。
ぎゃー!!私ってば、何てことを...。
慌てて課長から離れようとした私に、久香が言った。
「何、今さら。ふふふ。遥菜の幸せそうな顔、久しぶりに見た」
なんて、茶化す。
「どうする?俺はこのままで構わないよ」
課長が恥ずかし気もなく、私を抱きしめたまま言う。
「い、いえ!1人で座れます」
そう言って、私は元の位置へ座りなおした。
でも、課長と手は繋がれたまま。
「で、大和。綾と別れる気あるんだろ?」
翔さんが課長に聞くのを聞いて、私の心が再び――――ざわめいた。
「.....今の俺は美空のほうが大事だ。美空を――――守ってやりたいと思う」
課長の言葉が嬉しかった。
好きな人に想われる幸せを感じる。
でも、課長を愛している綾さんのことを思うと、素直に喜べない自分がいるのも事実だった。
私のせいで、課長と綾さんが離婚するなんて。それは許されないことだよ。
綾さんの幸せを奪う権利はないんだから。
でも、課長が好きな気持ちを忘れることなんてできない。
どうすればいいの......?