青のキセキ
時を刻むもの
ある日のこと。
部長に呼ばれて応接室に行くと、そこにはソファに腰掛ける部長と課長の姿があった。
――――ドクン――――
鼓動が跳ねる。
え?どうして、課長もいるの...?
もしかして、バレたの...?
何で…?電車の中で手を繋いでるのを、誰かに見られた?
ど、どうしよう...。
動揺して視線が泳ぐ私。部長と課長の顔を見ることができず、思わず下を向く。
次の瞬間、
「美空君、悪かったね。急に呼び出して。じつは、海堂君と一緒に出張に行ってほしいんだが」
と、私の危惧に反し、部長の明るい声が聞こえた。
「は?し、出張...ですか?」
てっきり、課長との関係がバレたものだとばかり思ってたから、素っ頓狂な声を出してしまう。
「あぁ。今、海堂君にも話してたんだが、今は本社にしかない企画部を九州支社にも作ろうという話になっててね。来週末にそのための会議があるんだが、九州支社といえば、数か月前まで海堂君がいたし、支社長とも仲良しだそうだから、海堂君にお願いしようかと思ってるんだ。それで、そのサポートを君にお願いしたいんだが...」
部長の話を聞き、課長とのことがバレたんじゃないことにホッとして、深く息を吐き出す。
「わかりました。私でお役に立つなら、喜んでお引き受けします」
課長と出張なんて、ドキドキする。
堂々と二人で歩ける。そう思うと嬉しくなった。
「ありがとう。助かるよ」
私の返事を聞いて、課長が笑顔で言った。
「飛行機のチケットとホテルの部屋の手配は総務のほうでしてもらうから、そのつもりでいてくれ」
部長は、課長と私にそう言うと、部屋を出て行った。
部長が出て行った後、私は、その場に呆然と立ち尽くす。
...........................。
......え?
ホ、ホテル?
「課長、今、部長、ホテルとか言ってませんでした?」
慌てて課長に確認する。
「ん?ああ。泊まりだからな。会議が、土曜と日曜の二日間あるから、土曜日の夜は、向こうで泊まることになる」
「......私、日帰りだとばかり思ってました」
「嫌か?」
課長が優しい眼差しで私を見つめる。