青のキセキ
マンションの前で、課長の到着を待つ間、何度も腕時計を見る。
私の腕には、昨日、課長に貰った時計。
課長、気付いてくれるかな。
なんて、ドキドキしながら待つこと5分。
課長の車が見えた。
段々と近づいてきて、私の前で停まる。
「おはよう。待たせたな」
車から出てきた課長の爽やかな笑顔に、胸が踊る。
「おはようございます。よろしくお願いします」
挨拶を返す私の手にある荷物を見て、目を大きく見開いた課長。
「お前、この中何入ってんの?」
さりげなく、私の手からボストンバッグを奪い、車の後部座席に入れる。
「着替えと化粧品、タオルに……」
数を数えるかのように指を順番に折りながら、中に入れたであろう荷物を一つ一つ挙げていく。
「タオル?そんなの、ホテルにあるから持ってこなくてよかったのに。クックッ…」
課長が横目で言って笑う。
「そうなんですか?知らなかった。旅行とかしたことないから、全然分からなくて」
「そうなんだ。じゃ、これが初めての旅行?ていうか、仕事だけど...」
「...はい。初めての出張兼旅行が、課長と一緒だなんて、嬉しいです」
「俺も、美空と一緒の時間が過ごせて嬉しいよ」
そう言いながら、助手席のドアを開けてくれる課長。
空港に向けて、車が走り出した。
朝早くということもあり、道は空いている。
「車、乗せてもらうの2度目ですね」
「ん?あぁ。そうだな」
「この車、本当にかっこいい」
「美空がそう言ってくれて、本当に嬉しいよ」
にっこりと笑う課長。