青のキセキ
7時ちょうどに課長が迎えに来てくれた。
「用意できた?」
「はい!」
二人一緒に部屋を出て、ホテル内のカフェレストランで洋食ビュッフェスタイルの朝食を楽しむ。
レストラン内には、焼きたてのパンと、焙煎されたコーヒーの豊かな香りが広がる。
窓際の席に課長と向い合せに座る。
新聞をチェックしながら、コーヒーを飲む課長。
コーヒーカップに絡まる彼の長い指。
コーヒーを飲む彼の唇。
あの手、あの指、あの唇に、私は愛されたんだ...。
じっと課長に魅入られるように見つめていると、私の視線に気づいたのか、課長が上目づかいに私を見た。
――――重なる視線。
ドクン。一瞬で胸が熱くなる。
昨夜のことを思い出していたことを悟られそうで、慌てて視線を逸らす。
「どうかしたのか?」
そんな私を不自然に思ってか、課長が聞いた。
「いえ!何でもありません」
否定したものの、課長にはお見通しらしく...。
「何か、照れるな」
「え?」
「やっと一つになれたんだと思うとさ」
(恥ずかしい...)
「これから、もっと二人だけの時間がとれるといいな」
私の手に、課長の手が添えられる。
「私は今のままで幸せです」
これ以上望んだら、罰があたる。ただですら、罪を犯しているというのに。
添えられた課長の手に光る結婚指輪を見ながら課長に返事をした。
「綾のこと、もう少し待ってくれ」
「無理しないでくださいね。本当に、私は今のままで十分幸せなんですから」