青のキセキ
朝食を食べ終え、ホテルをチェックアウトした私たちは、そのまま九州支社へ行き、昨日の続きの会議に出席した。
今日はお昼前に会議は終了。
飛行機は夕方の便だから、それまではフリータイム。
「さて、帰りまでどうするか。まずは昼飯だな」
九州支社のみなさんに挨拶を済ませ、社外に出たところで両手を上に挙げて伸びをした課長。
そんな課長を見ながら、会議が無事終了したことに安堵すると同時に、もう少しで出張が終わってしまう寂しさを感じていた。
もうすぐ終わってしまう。
明日からはいつも通りの生活。
この夢のような時間は、あと数時間で終わってしまうんだ...。
「...ら、....そら。美空!」
課長が私を呼ぶ声。
「あ、すみません」
「どうした?疲れたのか?」
眉間に皺を寄せて、心配そうに私を覗き込む課長。
「...いえ。もうすぐ出張が終わると思ったら、寂しくて」
「美空...そんな可愛いこと言うなよ」
そう言うなり、課長は私の手を引っ張って歩き出した。
「でも、俺も同じ気持ちだよ」
歩きながら課長が言う。
「空港に行くまで少し時間があるから、観光でもするか」
「はい」
課長が同じ気持ちでいてくれることが嬉しくて、胸がキュンとんなる。
「さ、お昼でも食べに行こうか。何が食べたい?」
繋がれた手をそのままに、肩を並べて歩く。
「おいしいラーメンが食べたいです」
せっかく博多に来たんだもん。おいしい豚骨ラーメン食べなきゃ!
「ラーメンか...。なら、あそこに行くか」
と言って、連れて行ってくれたのは。
博多駅の中にある、博多めん街道。
どうやら、九州のおいしい麺屋さんが勢ぞろいしているらしく、ラーメンや焼きそば、そばにうどんなど、色々な麺屋さんが並んでいる。
「俺のお勧めはここ」
課長が指さした、一軒のお店。
豚骨ラーメンの評判が高いお店らしく、店内は満員状態。
課長が美味しいというだけあって、本当に美味しかった。
極細麺に濃厚な豚骨のスープがよく絡んで、かなり食べごたえがあった。
「ごちそうさまでした」
お店を出て、課長にお礼を言う。相変わらず、食事代はすべて課長が出してくれる。
「どうだ?美味かっただろう?」
「はい!すごく美味しかったです」
「さ、帰りの飛行機まで時間あるな。これからどうする?」
課長が腕時計を見ながら言った。
「そうですね...」
私も自分の手にはめられた腕時計を確認する。
只今の時刻、午後1時。
「お土産買って帰りたいので、どこか買い物できるところありますか?」
課長はちょっと考えて。
「空港でも買い物できるけど、この辺りだと駅ビルとかもあるし。時間もあるし、ちょっとブラブラするか」
そう言って歩き出す課長。
後を付いていく私。