青のキセキ
美空を迎えに行くと、美空が笑顔で部屋から出てきた。
きっちりと身なりを整え、控えめなメイクを施し、髪をアップにまとめた彼女と朝食を楽しむ。
焼きたてのパンを口に運ぶ美空の唇が艶やかで、ドキッとする。
心臓の音が響く。
美空に悟られないよう新聞に目を落とし、香ばしい香りのコーヒーを飲む。
口の中いっぱいに広がる、ほどよい苦み。
美空の視線を感じ、上目づかいに前を見ると、彼女と目が合った。
慌てて視線を逸らす彼女。
どうかしたのか?
いや、きっと彼女も俺と一緒で、昨夜のことを思い出してるんだろう。
何だか照れる。
初めて付き合ったかのような、青春の甘酸っぱさを感じる。
実際は、そんな純粋なもんじゃないけど。
でも、お前と一つになれたんだと思うと、本当に嬉しいんだ。
もっと、もっとお前を抱きたい、そう思う。
俺達に未来の保証がないからか、不安な気持ちが絶えず付き纏う。それは目の前で恥ずかしそうに笑みをこぼすお前も同じのはず。
そんな不安をかき消すように、もっと二人での時間を増やせたらいい、そう思った。
美空の手に自分の手を添える。
美空の目線が、左手の薬指に向いているのを感じた。
そこには、俺が妻帯者である証がある。
こんなにも『結婚指輪』の存在が大きいと感じたことはなかった。
綾と幸せな時間もあったはずなのに...。
もう少し待ってくれ。
綾にきちんと話をするから。
お前との未来のために。