青のキセキ
手術室の前で待つこと1時間。
赤く光っていたランプが消え、手術室の扉が開いた。
中から出てきた医者の表情が固く、俺の心臓はドクドクと激しく脈打つ。
隣にいる綾が俺の手をギュッと握る。
きっと、医師がこれから発する一言が怖いのだろう。
「残念ですが、お二人とも...」
医者が全てを話し終わらないうちに、俺も綾も二人が亡くなったことを認識した。
「う...そ...。嘘よ...。お父さんとお母さんが死んだなんて...。嫌ぁぁぁ!!!」
泣き叫ぶ綾の姿を目の当たりにする。
医者曰く、義父も義母もかなり激しい衝撃を受け、ほぼ即死に近い状態だったらしい。
手術室の前で座り込んで泣いている綾を脇から支え、立たせ、椅子に座らせる。
綾にかける言葉が見つからない。
ただ側に座ってることしか出来ない。
義両親が死んだことに対して、少なからず悲しみはある。
だが、綾の浮気問題の時に、謝るどころか、自分の娘を庇った彼らと俺の間には溝があったことは否めない。
実際、あれ以来、俺と義両親が会うことはあまりなかった。
泣き崩れる綾に、ただただ寄り添う。
綾が俺の胸に顔を埋め、肩を震わせているというのに、俺は抱きしめてやることが出来なかった。
目の前で、妻が両親を(俺にとっては義両親)を亡くし、悲しみに暮れているというのに...。
俺は先ほどまで抱いていた美空の肌の感触を思い出し、一人で寂しくベッドで寝ているだろう美空を想っていた。
ふと我に返り、己の罪深さを改めて思い知らされる。