青のキセキ
次の日、いつも通り出勤した私。
当たり前だけど、課長は電車に乗ってこなかったし、会社にもいない。
昨日のメールの後、課長からは何の連絡もなかった。
きっと対応に追われて忙しいのだろう。
綾さんも悲しみに暮れているはず。課長にとっても家族なのだから、課長自身も悲しいよね...。
二人が寄り添う姿を想像し、発狂しそうになる。
嫉妬でぐちゃぐちゃな私の心。
色々と想像して夜は一睡も出来なかった。
翌朝、泣き腫らした顔を冷やし、コンシーラーで目の下にできたクマを隠して出勤。
業務開始と共に、部長がみんなに言った。
「海堂君の奥さん、綾さんのご両親が事故で亡くなったらしい。落ち着くまで海堂君は休みになるから、そのつもりでいるように」
部長の言葉に、周りのみんなはざわめく。
春山さんや佐山さん、石川さんも驚いている。
「事故って...」
「嘘...」
騒然となった企画部。
「美空君、ちょっといいかな?」
そんな中、部長が私を呼ぶ声。
「あ、はい」
部長の後について、応接室へ入る。
「突然で申し訳ないが、お通夜へ同行して欲しいんだが...」
「え?私が...ですか?」
「君には海堂君のサポートをしてもらってる。彼が休みの間にするべき仕事のことなど、聞いておく方がいいと思うんだが...」
部長の言うことも尤もだ。
課長のサポートが主な仕事の私。課長が休みの間、私がすべきことは課長にしかわからない。
でも、綾さんと寄り添う彼を見ることになる。
見たくなんかないのに――――。
「わかりました」
断るわけにもいかず、了承の返事をした私は部長に言われるがまま、家へ戻り葬儀へ出る準備をするために、会社を後にした。