青のキセキ


タクシーが葬儀会場に着いた時には、空を赤く染めていた夕陽は沈み、暗い闇へと変わろうとしていた。


葬儀はまだ始まっていないようで、会館の入口葬儀会社の人や親族だと思われる人がいた。


課長の姿はない。綾さんの姿も...。




「すみません。JPフードの者です。海堂課長がどちらにいらっしゃるか、ご存知ですか?」


石川さんが、近くにいた人に訊いた。



「奥の控室にいらっしゃると思いますよ」



お礼を言い、その場を後にする。




部長と石川さんと共に、控室の方へ歩く。



一歩一歩進みながら、私はバーベキューの時のことを思い出していた。



あの時と一緒だ。



あの時も、課長と綾さんが一緒に居る場所に、こうして近付いて行ったんだった。



当時のことを思い出し、涙が浮かぶ。




結局、あの時から何も変わってない。




強くなろうと決めたのに、結局何一つ私は変わってない。




情けなくて、目に涙を浮かべたまま自嘲する。







控室の前に着き、石川さんがノックしようとした、その時。




ガチャ――――と音がして、ドアが開いた。







中から出てきたのは、黒のスーツを着た課長と――――



黒の和装の綾さんだった。







綾さんは憔悴しきった様子で、課長に肩を抱かれていた。





その光景を見た途端、胸をえぐられるような痛みを感じ、二人から目を逸らした私。








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