青のキセキ

「今日は参列していただき、ありがとうございました」

部屋へ入るなり、課長が部長に頭を下げた。


そして、石川さんと私の方を向き、

「石川も美空もありがとうな」

と、微かに目を細めて言った。



「こんな時に悪いんだが、急ぎの仕事とかあったら...と思ってね。石川君と美空君に指示してもらえるとありがたい。私は急な出張で手伝えなくなってね」

すまなそうに課長に言う部長。


「わかりました」


そう返事した課長は、自分の鞄を取りに控室に戻っていった。




課長が席を外して、間もなく...。



綾さんが部屋へ入ってきた。


「今日は父と母のために、遠い所ありがとうございました」


そう言って頭を下げ、部長と会話を交わす綾さん。



「主人が居てくれて助かりました」

「全て主人がしてくれたから...」

「これからは彼だけが頼りです」


話しの節々で課長が出てくる。その度に胸を刺されたように痛くてたまらなかった。この場からいなくなりたかった。


でも、必死で耐えるしかない。


だって。


この痛みは、私が犯している罪そのものなのだから...。









「コーヒーでも淹れて来ますね」


部長と話の区切りがついたところで綾さんが言った。



「手伝います」


綾さんだけに任せるわけにもいかず、私も席を立った。




























< 366 / 724 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop