青のキセキ
「今日は参列していただき、ありがとうございました」
部屋へ入るなり、課長が部長に頭を下げた。
そして、石川さんと私の方を向き、
「石川も美空もありがとうな」
と、微かに目を細めて言った。
「こんな時に悪いんだが、急ぎの仕事とかあったら...と思ってね。石川君と美空君に指示してもらえるとありがたい。私は急な出張で手伝えなくなってね」
すまなそうに課長に言う部長。
「わかりました」
そう返事した課長は、自分の鞄を取りに控室に戻っていった。
課長が席を外して、間もなく...。
綾さんが部屋へ入ってきた。
「今日は父と母のために、遠い所ありがとうございました」
そう言って頭を下げ、部長と会話を交わす綾さん。
「主人が居てくれて助かりました」
「全て主人がしてくれたから...」
「これからは彼だけが頼りです」
話しの節々で課長が出てくる。その度に胸を刺されたように痛くてたまらなかった。この場からいなくなりたかった。
でも、必死で耐えるしかない。
だって。
この痛みは、私が犯している罪そのものなのだから...。
「コーヒーでも淹れて来ますね」
部長と話の区切りがついたところで綾さんが言った。
「手伝います」
綾さんだけに任せるわけにもいかず、私も席を立った。