青のキセキ
食事を済ませ、そのままその場にいると、親戚に酒を勧められた。
普通なら酒を飲みながら個人を偲ぶべきなのだろうが、美空のことが気になってそんな気分になれなかった。
内ポケットに入れた携帯に神経が集中する。
まだ美空は家についてないのか、携帯は静かなままだ。
時折取り出してチェックするものの、着信は無い。
絶えず気になる時間。
もうすぐメールを送ってから2時間になる。
まだ着かないのか。
胡坐をかいた膝の上で、左手の中指がトントンとリズムを刻む。
腕時計をみて、歯噛み。
「ちょっと外の空気を吸ってくる」
綾に言って外に出た。
そして再びメールを送る。
『今、どこにいる?』
もしかしたら、途中でまた気分が悪くなったのかもしれない。
まさか、石川と...?
いや、それは無いと思う。無いと信じたい。
しばらく返事を待ったが、携帯のバイブが震えることはなかった。
イライラが積り、いてもたってもいられなくなり、美空の携帯に電話をかける。
側に石川がいたら...と思ったが、返事がないことの方が気にかかった。
3回電話をしたが、結局美空が電話に出ることはなかった。
何かあったのか...!?
美空の体調が悪くなったりすれば、石川から連絡があるはずだ。
美空が電話に出ないということは、側に石川がいるということか...?
まだ二人一緒にいるのか...?
『今から行く』
美空にメールを送り、俺は綾の元へ戻った。
「済まない。仕事のことで、大切な書類を渡し忘れていた。明日の朝までには戻るから、今から会社へ行って置いてくるよ」
「え?今から?」
不満そうな綾の顔。
「明日、クライアントの所へ持っていかないといけない書類なんだ。すまない」
綾に有無を言わさず、俺は車のキーと仕事の鞄を手に駐車場に停めてある車まで走った。