青のキセキ

「今日俺がいないとき、綾が何を言ってたか教えてくれないか？」


「...葬儀の準備も全て課長がしてくれたって。ずっと側にいてくれたって...言ってました。これからは課長だけが頼りだって。それに...」

「それに？」

「自分にとって、課長がどれだけ大切なのか分かったって」


「.........」


「綾さん、課長のことを本当に愛してるんですね」



「美空...」


「気にしないでください。分かってたことだから。優先されるべきなのは綾さんだって分かってるから。だから、大丈夫です。私は...２番目でも...いいから...側にいら...れる..だけで...」


途中から涙が溢れて、ちゃんと話せなくなった。課長の目を見ることが出来なくて、俯いたままの私。


ポタポタと、フローリングの床の上に落ちる涙。



ふと、頬に温かな手が触れる。


両頬を掌で包まれ、顔を上に向けられる。


「...ごめん。辛い思いをさせて」


眉間に皺をよせ、悲痛な面持ちの課長。



違う。違う、違う。頭を左右に振りながら、課長の目を見る。



「違う。課長のせいじゃない。私が綾さんに対して、嫉妬の気持ちを抑えられなくて...。こんな嫉妬でぐちゃぐちゃな私を知って、課長に嫌われるのが...怖いんです」



「バカ。嫌うわけないだろう。それだけ俺のことを好きだっていうことだろう？」



「課長...」



「俺も、石川に嫉妬したよ。お前と石川を二人きりで帰したくなかった」





重なる二人の視線。









ドクドクと鼓動が激しさを増してゆく。