青のキセキ
それから3日後、佐山さんと私は隣町にある近くの料亭に居た。
依頼主の佐伯宏一さんに会うためだ。
課長に貰った腕時計で時刻を確認すると、只今の時刻、午後1時15分。
待ち合わせは午後1時半。
佐山さんが佐伯さんに連絡をとってくれたところ、今日の日時と場所を指定された。
「ここ、高そうだね...。電話でお昼ご飯をごちそうしますと言ってたけれど、まさか、こんな所だったなんて...」
お座敷に通された私達。佐伯さんはまだ来ていない。
声を潜めて佐山さんが私に言った。
確かに、普通の人は滅多に利用しないであろう雰囲気のお店。
お店の中に小さな川が流れていて、いかにも高そうな鯉が優雅に泳いでいる。
一歩外に出れば、車の音や人の声で騒がしいのに、ここはとても静かで、ししおどしの音が心地よく響く。
1時25分。障子が開き、一人の男性が入ってきた。
「お待たせしました。佐伯宏一です」
50代と思われる、見るからにダンディーな男性が頭を軽く下げて、席へ着いた。
「初めまして。JPフードの佐山です。この度はご依頼いただきありがとうございます。隣の美空と二人で、佐伯様を担当させていただきます」
「美空です。よろしくお願いいたします」
佐山さんに紹介され、慌てて挨拶を交わす。
「こちらこそ、よろしくお願いします。もうすぐ、息子も来る予定です。息子と言っても、娘婿なんだが。少し遅れるようなので、先に食事始めましょうか。食事しながら、依頼の件についてお話しますよ」
佐伯さんは、そう言って店員さんを呼び、食事の注文を済ませた。
食事が運び込まれるまで、佐伯さんとお喋りを楽しむ。