青のキセキ
愛しい女【大和side】
――――『翔』にて――――
「よぉ、大和。今日は一人か?」
俺の後ろを覗き込むようにして確認する翔。
「あぁ」
「そっか。まぁ、座れよ」
「どうした?元気ないじゃん」
深く息を吐いた俺に翔が言った。
「ん?……いや……実は、長期出張でしばらく東北と関西へ行くことになった」
今日、部長に呼ばれ何事かと思ったが、出張の依頼だった。
しかも、東北と関西を往復しろときたもんだ。
出張は別に構わない。会社の業績が上がり、支社が増えるのも社員にとって嬉しい限りだ。
だが、なんで長期なんだ。3ヶ月を目処にだと?
ふざけんな。
美空と会えないだろうが。
「ふぅ~ん。それで、そんなに沈んでんだ?遥菜ちゃんと離れ離れになるから」
面白いものでも見るように、ニヤニヤしながら翔が言う。
「……悪いかよ」
「いいんじゃね?お前、遥菜ちゃんと付き合うようになってから、人間らしくなったな」
「は?どういう意味だよ」
「以前の大和は、女に現を抜かすような奴じゃなかったのに、今のお前は遥菜ちゃんが可愛くて仕方ないって思ってることを隠そうとしないからさ」
「......」
ギロリと翔を睨む俺。