青のキセキ
会議の後、デスクワークを終えて店に急いで行くと、美空は既に来ていた。
逸る気持ちを抑え、できるだけ平静に美空の待つ個室へ歩を進める。
個室に入ってすぐに美空の姿が目に入った。笑顔で俺を迎えてくれた美空。
ビールで乾杯を交わした後、案の定、どうして今日本社へ来ることを教えてくれなかったのかを聞かれた。
美空の驚く顔が見たかったのだと言うと、美空は黙ってしまった。
怒った?それとも、ガキみたいだと呆れてるとか?
ごめん。そんな顔をさせたかったわけじゃないんだ。
会いたかった。
ただ、それだけ。
久々の二人の時間に胸を弾ませながら、美空との会話を楽しむ。
昼間から気になっていたことを聞こうか聞くまいか。
知り合いの医者について…。
美空からは、その事について何も言おうとしない。
聞かない方がいいのかもしれない。辛い過去を思い出させるだけかもしれないから。
病院に勤めていた美空にとって、知り合いの医者は何人もいるはずだ。昔の男だけじゃない。
佐山もいるし、気にすることはないか…。
店を出て、夜の町を歩く。
美空は、俺の横を歩こうとはしない。いつも、2、3歩後ろを歩く。
誰かに見られたときのために…。
美空に触れたくて堪らない。たった2、3歩の距離がもどかしい。
明日の朝一の新幹線で戻らないといけないこと、美空も明日は仕事だということは、重々承知だ。
だが、愛しい女を前に、俺の欲望は限界だった。
美空も同じ気持ちだと知り、俺の心が震えた。
どうして、こいつはこんなに可愛いのか。
愛しくて、切なくてたまらない。