青のキセキ
エレベーターが1階に着き扉が開いた途端、視界に入った綾さんの姿。
「駅で待ち合わせって言ってただろう」
「早くあなたに会いたくて、来ちゃった」
そう言って、課長の腕に自分の腕を回し、課長に甘える綾さん。
人目を気にせずに、課長に触れることができる綾さんが羨ましい。
妬ましい。
私には出来ないから。
私には...そんな権利が無いから。
「お疲れ様です」
二人の姿をこれ以上見たくなくて、頭を下げた私は急ぎ足で会社を後にした。
結局、修一さんのことを言えなかった。時計のことも...。
今日、課長が帰ってきてから、時計を着けてないことに気付かれないか気になって仕方なかった。
気が付けば、右手で左手の手首を隠すように覆っていた。
長袖のブラウスのお陰か、課長には気付かれずに済んだ。
課長がくれた時計。
私にとって、あの時計は課長そのもの。
修一さんから時計を取り返さなきゃ。
会社を出た私は、修一さんの待つホテルへ向かった。