青のキセキ
【大和side】
やっと、美空の待つ本社へ帰れる。
今日、本社から連絡があった。
3日後に戻ってこいと。
夜、美空に電話をかけた。
もちろん、本社へ帰ることを知らせるためだ。
電話の向こうで、嬉しいと言う美空の声に胸が大きく脈打つ。
俺も早くお前に会いたい。
電話で会話をしながら、3日後に会えると思うと、自然と顔がにやける。
まさか、美空が昔の男のことで悩んでるとも知らずに。
美空との電話を切り、ベッドに横たわる。
綾にも連絡を入れないと...とは思うものの、明日でも構わないか..と思い、俺はそのまま目を閉じた。
翌日の夜。
綾に電話を入れた。
「やっと終わるのね。お疲れ様」
綾の声の向こうが、やけに騒がしい。
時計で時間を確認すると、22時を過ぎていた。
「ジムに行ってて。今、帰る途中なの」
浮気相手のいるスポーツジムか。
「ねぇ、明後日、何の日か覚えてる?」
綾が甘えた声を出した。
明後日?
そういえば。
「誕生日だな」
「ウフフ。正解!私の誕生日に帰ってきてくれるなんて嬉しいわ。そうだわ!私、明後日会社まで行くから、一緒に食事しましょ」
「...何時に仕事が終わるか分からないし、週末にしないか?」
さっきまで、美空に会えると喜んでいたのに。
美空と一緒に過ごしたいのに。
「そんなの、私の誕生日だからデートするんだって言って早く帰らせてもらってよ。愛妻家だって、あなたの株が上がるかもよ」
は?何勝手なこと言ってるんだ。
美空の前で、そんなこと言えるわけないだろうが。
「何なら、企画部まで行こうかしら。私が迎えに行けば早く帰らせてくれるんじゃない?」
......。
「わかった。――――駅の改札で待ち合わせしよう」
「着いたら電話するわ」
チッ!
イライラが募り、電話が済むなり携帯をベッド横のソファに投げつけた。
明後日は、美空とゆっくりと過ごそうと思っていたのに。
何だって、綾の誕生日と重なるんだ。
美空に何て言えばいいんだ...。