青のキセキ
一歩ずつ、ゆっくりとホテルの中へと歩を進める。
時計だけは、どうしても返してもらいたいから。
エレベーターに乗り、11Fのボタンを押す。
エレベーターが上昇するのと同時に、心拍数が上がるのを感じた。
長い廊下に人影はなく、絨毯の上を目的の部屋まで歩く私。
━━━━ドクン、ドクン。
部屋の前に立ち、緊張で強張った体を解すように深呼吸を数回繰り返した。
身体中から滲み出る汗。
この扉の向こうに修一さんがいる、そう思っただけで足がすくむ。
本当は、今すぐ帰りたい。
このまま、引き返してしまいたい。
だけど。
課長にもらった時計も扉の向こうにあるんだと思ったら、そうすることも出来なくて。
━━━━コンコン、と。
震える手で扉をノックした。