青のキセキ
一度狂いだした歯車は...
次の日。
朝食を終えた私の元に、先生がやって来た。
「美空さん、よく眠れた?」
「...あ、はい」
「もし体調が悪ければ、もう一日入院してもいいのよ」
「大丈夫...です。帰ります」
病院にいても何も変わらない。家に戻るのが今日か明日かの違いだけ。
「そう...わかった。それで、考えくれた?警察に言うかどうか」
先生が申し訳なさそうな顔で私に聞く。
「嫌なことを思い出させてごめんなさいね。精神的にも肉体的にも傷付いているのに、こんなことを聞いて本当にごめんなさい」
「いえ...」
「レイプは犯罪よ。決して許されることじゃない。だから、あなた次第なの」
「......警察には......言わないで下さい」
「......それでいいの?」
「...はい。早く忘れたいから...。それに、彼の奥さん、妊娠しているらしいんです。産まれてくる赤ちゃんのことを考えたら...言わない方がいいのかなって...」
「相手の家庭のことを気遣う必要なんてないのよ?あなたは被害者なんだから」
「警察に言っても、私がレイプされた事実は消えません。根掘り葉掘り聞かれて嫌な思いをするなんて耐えられそうにないから...」
昨晩、ゆっくり考えた。
これが、私の答え。
修一さんのことは許せない。
だけど、美咲さんのお腹にいる赤ちゃんのことを思うと、私のせいで父親のない子にすることはできない。
それに、私も早く忘れてしまいたい。
修一さんに抱かれたことを。
色々考えて出した答え。
「わかったわ。あなたがそう言うなら。もし、気持ちが変わったら連絡して。証拠は暫く保存しておくから」
先生が出て行った後、少ししてから優しそうな女の先生が入ってきた。
心療内科の先生らしく、私の気持ちに寄り添って話を聞いてくれて、退院した後も定期的に通うことで今回の精神的ダメージを軽減しようと言ってくれた。