青のキセキ
お昼過ぎ。翔さんと久香が迎えに来てくれた。
「迷惑かけっぱなしで...本当にごめんなさい」
「昨日も言ったけど、謝る必要なんてないから。ていうか、次謝ったら怒るわよ?」
今日も一花ちゃんを翔さんのお母さんに預けて来てくれた二人に私が謝ると、久香が私を睨んで言った。
「それより、一人で大丈夫なの?しばらくうちに来る?」
「そうだよ、遥菜ちゃん。うちに来ればいい。会社は大和が休職届けを出してくれているそうだから、しばらくうちで休んだらどう?」
久香が言うと、翔さんも運転しながら言ってくれた。
「大丈夫。家に...帰ります。ありがとうございます」
「本当に大丈夫?」
久香が心配そうに私の顔を覗き込む。
「うん...ありがとう」
久香の目を見て、お礼を言う私。
「警察には...?」
久香が聞いた。
「......先生にも言ったんだけど...言わないことにした」
「あの男を許すの?」
「...許せないよ。だけど、早く忘れてしまいたいから...」
窓の外を流れる景色を見て言った。
私が警察に言わないこと決めたことに何か言われるかなと思ったけれど、二人とも私が決めたならそれでいいと言ってくれた。
ただ、彼が何のお咎めも無しにこれからものうのうと過ごしていくことに、腹立たしさや悔しさは感じているようだ。
「...彼の奥さんが妊娠してるらしいの...」
「あんたがあいつの家庭を気遣う必要なんてないよ」
「...先生にも同じことを言われた」
だけど。
いくら考えても、答えは同じ。
彼が捕まっても捕まらなくても、私がレイプされた事実は変わらないから。
それに、もし警察に捕まって美咲さんと離婚なんてことになったら...?
彼のことだ。
きっと仕返しに来る。
それに怯えて暮らせるほど、私は強くない。