青のキセキ
報い
約束の時間に、課長がお店にやって来た。
「待たせたな」
切れ長の目で優しく微笑む課長。
「会うの久しぶりだな」
そう言って私の頬に触れる課長の手が温かくて、私の緊張を解きほぐしてくれる。
課長の手に頬を乗せてゆっくりと瞳を閉じれば、胸の鼓動が心地よく感じられるようで。
「おいおい、俺達しかいないからって目の前でイチャイチャするのはやめてくれよ」
カウンターの中から笑いながら翔さんが言った。
誰にも邪魔されずに、ゆっくりと落ち着いて話す場所が必要だろうと、お店を休みにしてくれた翔さんと久香。
それだけではなく、私がちゃんと話せるように側に居てくれくれると言ってくれた。
「遥菜ちゃんはグレープフルーツジュースでいいんだよな?大和はビールでいいか?」
「はい」
「あぁ、サンキュ」
久香がジュースとビールを持ってきてくれて、グラスを合わせて乾杯する。
「俺達も何か飲もうか」
翔さんが言って、久香には私と同じグレープフルーツジュース、自分にはビールを入れてきたので、4人で改めて乾杯する。
「それで、話って...?」
喉の渇きを潤してから、課長が言った。
――――ドクン
来た...。
シーンと静まり返る店内。
言わなきゃ...。頑張れ!私!
久香と翔さんも目で頑張れと言ってくれているようで、心強く感じた。
「私...赤ちゃ...」
言おうとしたその時。
――――ブブブブブ......
課長の胸ポケットから、携帯が震える音が聞こえた。