青のキセキ
物心ついた時にはママもパパもいなかったけれど、一度も寂しさを感じたことは無かった。
私の周りには、いつも園長先生や久香、その他の友達がたくさんいたから。
私にとっては、彼らが家族だった。
でも、『本当の家族』というものを知らない私にとって、それに憧れを抱いているのは事実。
翔さんと結婚した久香が一花ちゃんを産んで、久香にも本当の家族が出来た。
久香を見ていれば、『家族』がどれほど大切か分かる。
一花ちゃんを見る翔さんと久香の愛情溢れる眼差し。
そんな彼らを見ていると、『子はかすがい』ということわざが、課長と綾さんにも当てはまるかもしれない...と思う。
この間、久香の話を聞いて、余計にそう思うようになった。
そんな中、私が課長の『家族』を壊すことなんて出来るはずがない。
だから...
もう終わりにするんだ。
私が側にいると、きっと課長も辛いだろうから、綾さんの元へ戻り辛いだろうから...私は遠くへ行くことを決めた。
そのための準備を始めた私は、毎日が不思議と充実した思いで。
一日一日、その時その時の『時間』を無駄に使うことなく大切に生活することができた。
課長との何気ないメールのやり取り、電話、課長と会う時間、全てが愛しくて。
旅行で最後なのだと思うと、余計に愛しさが増す。
人を愛することに限界はないのか..。
少なくとも、私が課長を愛する気持ちは日に日に大きくなっているし、こうして愛する気持ちは増している。
別れることは辛いけれど、これは自分が決めたことなのだと言い聞かせながら、私は毎日を送っていた。