青のキセキ
「これは遥菜に言わないでって頼まれていたから翔ちゃんにも言ってなかったことなんですけど、少し前に遥菜と会っているときに、海堂さんと綾さんが一緒にいるところを偶然見てしまったことがあるんです」
久香さんの言葉に一瞬心臓が止まるかのような衝撃を受けた。
聞けば、それは...あの買い物に行った日のこと。
昼休みに会うだけだからと、美空には言わないと決めた、あの日のことだった。
「その時、遥菜と『家族』について話をしたんです」
美空に聞かれた久香さんは、自分の思ったことを正直に応えたらしい。
翔と結婚して一花ちゃんが産まれて幸せなこと。家族の存在が大切なこと。
「私があんなことを言ったから...」
そう言って久香さんが自分を責める。
「今思えば、旅行前に店に来たときの遥菜ちゃんの様子がおかしかったのに、それに気付かなかった俺にも責任はある...」
悔しそうに顔を歪める翔。
「二人は悪くない。翔と久香さんには何の責任もない。悪いのは俺だ。全部俺が...」
そうだ。全て俺のせいなんだ。
俺も翔も久香さんも...美空のことを思い、涙を流す。
お前は苦しみを一人で背負い、どこへ行こうとしているのか。
頼むから...バカなことは考えないでくれと祈るしか出来ない無力な俺。
美空の気持ちを思うと胸が痛くて。
全ては俺への愛の証。
別れを決めたのは、俺を愛するが故。
分かっている。
美空の想いは。
美空...頼むから無事でいてくれ...。
お前だけが...罪を背負うことはないのだから。